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6月

第6回京都ライティングコンペティション文学賞3等賞受賞!

今年の初めに、第6回京都ライティングコンペティション文学賞に挑戦した。この文学賞の主催はライターズ・イン・京都(Writers in Kyoto)。京都を拠点とする、もしくは私のようになんらかの形で京都にゆかりのある、英語で著述する作家協会だ。作品の形式は問わず、300ワード以内で、テーマは「京都」。

5月15日に受賞作が発表された。「今回は世界21カ国から様々な国籍のライターたちが作品を寄せ、審査員たちも悩みましたが、第6回京都ライティングコンペティション文学賞の結果は以下のとおりです」

なんと、驚いたことに、わたしのエッセイ『Restaurant Boer(レストラン・ヴア)』が3等賞を受賞!

(選評)
「京都で初めて開業したオランダ料理レストランの様子が、ユーモアと愛情あふれる魅力的な文章で生き生きと描かれている。個人的なストーリーを語る筆者は確かにその場にいたことが、よくわかる。異文化ゆえにレストランでは誤解が引き起こされてしまったものの、それでもハッピーエンディングに終わったところが素晴らしい。最後に登場する橋のイメージが、この短い話を際立たせている。レストランはなくなったものの、そのかわり、人生のパートナーと出会えたのである。」

Restaurant Boer 原文(英語)

『レストラン・ヴア』 ハンス・ブリンクマン (溝口広美訳)

昭和33年の春に、友人の藤井さんが木屋町で小料理屋を始めるというので、手伝うことにした。木屋町四條下ルにあった婦人科医所有の空きスペースで、目の前に高瀬川が流れていた。日本でとまではいかないが、京都では明らかに、初めてのオランダ料理屋ということで、わたしが店名をいくつか提案したところ、藤井さんが「農民」という意の「ヴア」を選んだ。うなぎの燻製や栄養たっぷりのスープなどの品々に加え、オランダではblinde vinkenと呼ばれる大変おいしい仔牛肉のベーコン巻きをお勧め料理とし「めくらの雀」と意訳してメニューに載せた。なんとも奇妙な名前の、このオランダ料理こそが、店の繁盛を約束してくれるにちがいない。

「めくらの雀」には温野菜やジャガ芋を付け合わせた。ジャガ芋は、17世紀にオランダ貿易商がジャワのジャガタラ(ジャカルタの旧名)から持ってきた「ジャガタラ芋」を略した言葉といわれている。チーズ料理や、「猟師のシチュー」と呼ばれるリンゴ入りの肉、ジャガ芋、玉ねぎの煮込み料理なども作った。

当初は予約客などで賑わったものの、次第に客足は遠のいていった。たぶん「めくらの雀」に恐れをなしたのであろう。味ではなく、食欲をそがれるような名前が悪かったのだ。それから「ヴア」という店名も助けにならなかった。みやびな古都に「農民食堂」はふさわしくなかったのだろう。結局、店は1年も続かなかった。

それでも唯一のハッピーエンドは、同じ年の10月に、妻となる吉田豊子と「ヴア」の前で見合いをしたことだった。なぜ店の前だったのか。実は店の中で会う約束をしていたのだが、ちょうど葬列が高瀬川に架かる橋を渡ったところで、豊子は「不吉だから渡りたくない」と言ったため、わたしが橋を渡った。見合いは予定通り運び、わたしたちは意気投合し、4ヶ月後に夫婦となり、幸せな結婚生活を全うした。


レストラン「ヴア」英語による案内
(昭和33年)
「ヴア」のあった場所に立つハンス
「ヴア」のあった場所に立つハンス
(平成22年撮影)

オランダ人に大人気の
blinde vinken(めくらの雀)

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