最近の若者は昭和のカルチャーに関心が多いようですが、どう思われますか?
(20代 女性 メディア業)


昭和のカルチャーはアーティスト、ライター、映画やファッションのクリエーターにインスピレーションを与えることができるでしょう。昭和の良い部分が新しい生命を得て、今のテイストや社会にマッチしたものになる。

若者の昭和カルチャーに対する興味はヨーロッパやアメリカにおける60年代ブームと比較できるかもしれません。ただし、欧米の60年代はサイケ、ドラッグ、性解放、反体制に尽きる放縦な時代でした。それに比べると昭和はわずかな余暇があるだけの、働きどおしで不自由の多い時代でした。

日本の若者の昭和のカルチャーへの関心にはふたつの異なる要素があるようにわたしには思えます。つまり、外見上だけの関心と深く掘り下げたレヴェルへの興味です。昭和のファッションやムードを真似するのが前者です。もっと深いレヴェルにおいては、戦後の昭和の特徴ともいえる家族の絆、まとまりのあった地域社会、確かな方向性を求めるゆえ、関心を抱くのではないでしょうか。

現在の若者は昭和の若者にくらべるとはるかに自由ですが、人生の悩みを自らで解決するように求められています。昭和のカルチャーをとり戻すことはできません。あの頃に戻ることなど無理です。しかし歴史を学ぶことで自分に課せられた困難を乗り切る方法を見つけることができるはずです。

エアコンをつけるかわりに窓を開け、心の窓も開け、夏の涼風を部屋に吹き込めば、昭和の頃のように周りの自然とのつながりを取り戻すことができるでしょう。

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