***1月***

1月20日 新年をオランダで迎えて

クリスマスと新年を母国オランダで祝う恒例行事を終え、1月7日に自宅に戻った。

主に家族友人と過ごしたわけだが、それ以外にもアムステルダムにあるレジスタンス博物館訪問や、純日本居酒屋体験、そして、このたび「本物」と確認されたゴッホの陰気な自画像について、学ぶことも多かった。

レジスタンス博物館は第2次世界大戦中のオランダ人の生活について、特に1940年から1945年までのナチス占領下、ドイツ軍に対し抵抗運動を行った市民の様子を伝えている。実は、当ハブリサイトでも紹介した私の戦時体験記The Monkey Dance, Chronicle of a 12-year old Dutch boy in the Winter of Starvation, 1944/1945を読んだ友人が、この博物館を紹介してくれた。私の体験記に興味を示した学芸員は、ミュージアムショップでThe Monkey Danceを販売すると約束してくれた。

さて、アムステルダムには多くの、いわゆる、「日本」レストランがあるが、大半は本物ではなく、出される日本食も地元の人間の舌に合わせた西洋風のものが多い。ところが今回、純粋な日本レストランらしきものを見つけた。終戦直後に私と妹が育ったアムステルダム市内の一画からそれほど遠くない場所にあるということで、二人で出かけてみることにした。狭い店内は、テーブルやら椅子やらお客やらで完全に混み合い、配膳するにも動きがとれないような状態だったが、食事は美味しいだけではなく、本物の日本食だった。押し込まれるように座らされた私たちの両隣のテーブルは日本人だったので、ここは確かだと思った。店の名前は「博多せん八」。なんという偶然だろう。

ゴッホ
ゴッホ最晩年の自画像

1890年7月、37歳で亡くなったゴッホが、その死の1年前の1889年に描いたといわれている自画像は、1910年にオスロ国立美術館のコレクションとなったが、色合いや画風が変わっているため、その真正性が疑われてきた。そこで、2014年にアムステルダムのゴッホ美術館が、時間はかかるかもしれないが、徹底調査をすることに同意した。本日、ゴッホの自画像は本物であること、この自画像が精神を病んでいた時期に描かれた唯一のものであることを、ゴッホ美術館が発表した。

困難続きの短い人生にもかかわらず、ゴッホは偉大な画家となった。まったく見事である。たった10年間に、2,100の作品を仕上げ、そのうちの860点は油彩。その大半は人生最期の2年間に描かれたものだった。

1月25日 『あとらす』 41号の巻頭を飾る

ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク

かれこれ60年近く前に西宮市の自宅に遊びに来たオランダ人青年ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクは、のちにミステリー作家となり、日本でも「フライプストラ警部補とデ・ヒール巡査部長」シリーズが創元推理文庫から出版された。

彼に影響を与えた日本の「あるもの」について、彼の人柄についてのエッセイにご興味の方は、西田書店より『あとらす』41号をお求めください。

総合文芸誌『あとらす』41号(定価1、000円+税)
電話 03ー3261ー4509
ファックス 03―3262―4643

***2月***

2月1日 日本とオランダの会社がニュースになった!

2019年の年末に、風力発電に特化したオランダの電力会社エネコが、41億ユーロ(約5000億円)で三菱商事と中部電力に買収されることに合意したと発表。シェルや他のライバル企業を下しての入札結果だった。エネコは現在オランダ44市町村が株主となっているが、民営化するのに伴い、その同意を得た時点で全株式が買い取られる。買収は三菱商事が80パーセント、中部電力が20パーセントを出資する合弁会社を通じて行う。

エネコ本社
ロッテルダムにあるエネコ本社

エネコによれば、買収後も経営方針や企業アイデンティティを保ち続けることを三菱商事が同意した点が決め手のひとつになったという。また、さらに10億ユーロを投じて三菱と中部電力が風力と太陽エネルギー事業を、オランダとドイツやベルギーで展開する計画も評価された。

今回の買収で、三菱商事は、エネコの再生エネルギーの発電事業と売買取引や小売り事業のノウハウを得ることで、再エネの開発を大きく進めることができるといわれている。欧州市場で洋上風力発電事業を行う三菱商事は、これらのうち400MW以上をエネコに移管する計画だ。

ライバル会社シェルにとっては大きな痛手である。再エネにおける主要企業となることを狙っていたからだ。

ところで、ロッテルダムを含む株主の市町村は、三菱商事に、Japanse Ereschulden(日本の「名誉の負債」)財団と連絡をとるよう求めている。第2次世界大戦中のオランダ人捕虜に対する「名誉の負債」とは、つまり、旧三菱財閥系企業による戦時中の強制労働問題についてのことである。

オランダの半導体製造装置大手ASMLのニュースも紹介しよう。我々の未来に必要不可欠と言われている5G、ビッグデータ、人工知能(AI)などのテクノロジーに欠かせない「最新かつ高速の半導体を製造するために必要な、最先端の装置を提供できる世界唯一の会社」と言われているのがASMLだ。

そのASMLが、なぜ話題となっているのか。オランダ南部のフェルトホーフェン(人口4万5千人)に本部を置くこの会社は、中国に「最新鋭の半導体露光装置」を輸出するため、輸出許可をオランダ政府に申請したのだが、「これほど高度なテクノロジー」は「とある場所」にはふさわしくないと述べるトランプ大統領やポンペオ国務長官からプレッシャーを受け、オランダ政府はいまのところ輸出許可を出していない状態だ。ロイター通信によれば、ホワイトハウスはルッテ・オランダ首相と「ASMLのテクノロジーを中国が得ることにより想定できる悪影響を指摘する」極秘情報を共有しているという。

一方、中国側は、オランダ政府に「中蘭関係を悪化させないよう、アメリカからの圧力には屈しないことを求めている。

ASMLは中国での売り上げが何十億ユーロと見積もっているので、この問題は「大きな賭けだ」とロイター通信は報じている。

誰もが息をひそめている。誰が最初にまばたきをするか?



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