***9月***

9月18日 福島原発の汚染水問題について

東日本大震災にともなって発生した、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きて8年以上が経過した。いまもって未解決の問題は、原子炉で融解した、高い放射線量の燃料デブリを、どうやって取り出し、廃炉とするのかということと、115万トンを超える放射能汚染水の処理についてだ。

2018年9月15日のハブリ日記でレポートしたように、第一原発の敷地内で保管されている汚染水は、放射性物質トリチウムが残されてはいるものの、安全上問題無いとみなされている。東電は、処理水保管タンクが2022年夏ごろ限界になるので、海洋放出を検討しているのだが、福島地域の漁業関係者や住民は反対している。

松井一郎大阪市長
松井大阪市長

松井一郎大阪市長は「処理済みで自然界の基準を下回っているのであれば、科学的根拠を示して海洋放出すべきだ」と発言し、大阪湾での放出受け入れも「あり得る」と発表した。

この発言に対し、大阪市民が抗議運動を起こしている。放射能汚染水の海洋放出を行うことはないだろうが、では、どうしたらいいのだろうか。


***10月***

10月1日 消費税10パーセントになりました

時の政権にとって、増税は常に苦渋の選択であり、日本の消費税が8パーセントから10パーセントに引き上げられることも例外ではない。これまで2度にわたって増税時期を延期してきた安倍政権が、本日、引き上げを実施した。

財務省は「国の借金」が2019年3月末時点で1103兆3543億円と発表。GDPに対する国家の債務残高の比率は238パーセントで、この数値は、世界で最も高い。

福岡のスーパー

2パーセントの消費税率引き上げで年間約5兆6000億円の財源が確保され、そのうちの1兆9000億円を借金返済にあてるというが、わずかな額にすぎないし、むしろ、10〜12月期は2.7パーセントのマイナス成長が見込まれており、これは増税に対する代償といってもよいだろう。低所得世帯の消費税負担を軽減するために、食品への課税は原則8パーセントに据え置かれた。

高い借金額にもかかわらず、日本円は買われ続け、ドル/円レートも、1年前は1ドル114円だったのが、現在は107円だ。ユーロ/円レートも、去年の今頃は、131円で、現在は117円。

これは一体どういうことか。おそらく、日本の借金の国債が、日本銀行(468兆9352億円)と民間銀行によって保有されているからだろう。

日本円が安全通貨と見なされる根本的な理由は、日本経済の安定性によるのかもしれない。米中貿易摩擦、日韓関係の悪化、英国のEU離脱などが、世界経済を失速させ、景気後退に陥る恐れがでてきた。日本だけが影響を受けないとは限らない。すでに日本国内の工場で生産休止を始めているところもあり、このたびの消費税引き上げで、日本経済は大きな打撃をうけるかもしれない。

10月16日 台風19号の残した爪痕

12日(土)と13日(日)に明治学院大学で開催予定のジャパン・ライターズ・コンフェレンスに出席するハブリチームは、台風19号に遭遇してしまった。この超大型台風は関東や東海を中心に、土曜日に、記録的大雨をもたらした。幸い、翌日曜日早朝には台風が去り、秋晴れの中、コンフェレンスは無事終了した。詳しい報告はAttention!をお読みください。

氾濫した千曲川
「氾濫した千曲川」The Japan Timesより

英語では「ハギビス」と呼ばれた台風19号。フィリピンのタガログ語で「スピード」という意味らしい。たしかに猛烈な速度で通過し、甚大な被害をもたらした。1958年9月に首都圏や静岡地方を襲った「狩野川台風」に匹敵すると予想され、気象庁は厳重な警戒を呼びかけた。都内でも浸水被害が確認されているが、長野や福島や宮城の被害状況は深刻だ。80人が死亡し、豪雨で川の堤防が壊れる「決壊」が発生したのは71河川の135ヶ所。

日本という国は、いつも、自然災害に苦しめられる。地震、台風、洪水、津波、火山の噴火などが起こるたび、経済活動や社会生活は大きな影響を受ける。しかし、同時に、日本という国は、そうした災害にもめげず、復興のための見事な洞察力を発揮する。今回の台風19号の被害の大きさを考えると、生活再建やインフラ整備にはかなりの時間と助成金が必要となろうが、必ず復興できると信じている。

10月22日 即位礼正殿の儀

5月1日のハブリ日記で、新天皇御即位の模様を伝えた。本日は、即位の礼の中心となる、即位した天皇が日本国内外に即位を宣明する儀式が、皇居宮殿の正殿松の間で執り行われた。

参列した191の国と国際機関などの代表の中には、ウィレム=アレクサンダーオランダ国王とマクシマ王妃も含まれていた。

新天皇陛下
徳仁天皇
皇后陛下
皇后雅子
即位礼正殿の儀
即位礼正殿の儀
御帳台を後にする皇后陛下
御帳台を後にする皇后陛下
オランダ国王と王妃
ウィレム=アレクサンダーオランダ国王と
マクシマ王妃
(後方左から2番目と3番目)
のぼり旗
雨上がりの中庭にたなびく
「ばん」と呼ばれるのぼり旗

***7月***

7月5日 アムステルダムで見た日本と、オランダの牧歌的風景

家族や友人たちと過ごすため、アムステルダムにも滞在した。また、熱帯博物館でCool Japan展が開催中ということで、出かけてみた。もともと、漫画、アニメ、ファッション、あるいはハローキティのような「かわいい」キャラクターなどのポップカルチャーを「クール・ジャパン」と称していた。21世紀になり海外でも人気が高まりはじめたので、2010年6月に経済産業省が日本の「文化産業」を「クールジャパン」とブランド化し、国を挙げて促進することに決定した。

熱帯博物館で「クールジャパン」展 展示物

そういう背景を知らなかった私たちは、今回の展示会を、ポップカルチャーとしての「クール・ジャパン」に焦点をあてたものだと思っていたのだが、実際に見てみると、はっきりとした統一的テーマが読み取れず、思いつくままに日本の創造芸術を展示しているにすぎないように感じた。アニメや可愛いファッションはわずかばかりで、同じく伝統的な美術工芸品もあまり見当たらなかった。会場の一画ではオランダで活躍している日本人とオランダ人のカップルによる籠や屏風を展示していたが、どれも北欧調に見受けられた。

熱帯博物館

ところで、熱帯博物館は訪れるに値する。ここでは、さまざまな国のアートを学ぶことができるからだ。もともとオランダ領東インド(現インドネシア)のような海外の国々におけるオランダの資産や居住民を紹介する目的で設立された。しかし2018年になると、熱帯地域に限定せず「世界の人々と共有できる万人に共通のテーマ」に基づく展示を提供することになったわけだが、それでも熱帯博物館という名称は変わらない。

熱帯研究所
ヤン・デ・ヨングのオフィスを
指差すブリンクマン

この博物館と、隣接する熱帯研究所には、個人的な思い出がある。私が日本で暮らし始めたばかりの1950年代に、親愛する継父のヤン・デ・ヨングはこの研究所の「講義と翻訳コース科」の主任を務めており、嬉しいことに、日本語もこのコースのカリキュラムに加えてくれた。日本語は熱帯地方の言語などでは、もちろんない!


オランダ最終日の夕方、旧友の案内で、アムステルダム北東10キロ離れた場所にあるブルック・イン・ウォーターランドに出かけた。オランダで最も美しいと言われている村のひとつで、よく手入れされた庭々と、1628年建立のプロテスタント教会が有名。1600年代、この村は船長たちの間で人気の保養地だったという。

ブルック・イン・ウォーターランド1 ブルックインウォーターランド2

7月13日 歌合わせカルタの寄贈式

妻の写真

年初めのハブリ日記(1月22日)で報告したように、亡妻豊子の遺言で、先祖から受け継いだ貴重なカルタ一式を、大牟田市三池カルタ・歴史資料館へ寄贈することになった。所有者の写真を求められたので、1959年に金城学院大学の国文科を卒業した時の豊子の写真を、カルタと一緒に渡した。

カルタ研究者で三池カルタ館の顧問でもある法政大学名誉教授の江橋先生が、約半年間かけてカルタ199枚の写真をデジタル化し、詳しく調査。『吉田家旧蔵百人一首歌合わせカルタ』と名付けられた豊子のカルタは「現存するカルタの中でもっとも美しい」と評された。もともと16世紀中頃にポルトガルの船員たちによってもたらされた札遊びから始まったのが日本のカルタの起源である。

日本かるた文化館に掲載された『吉田家旧蔵百人一首歌合わせカルタ』https://japanplayingcardmuseum.com

カルタを梶原館長へ手渡す
左から大牟田市生涯学習課の大倉野課長、
梶原館長、ブリンクマン、江橋教授

電車で大牟田市へ出かけ、寄贈式を執り行った。江橋先生立会いのもと、カルタを梶原館長へ手渡し、NHKと地元のジャーナリストからインタビューをうけた。

寄贈式の模様は、翌日14日(日曜日)の夜のNHKニュースで放映された。豊子のカルタは、今年10月に一般公開される予定だ。

NHKニュース1 NHKニュース2
NHKニュース3 NHKニュース4
NHKニュース5 NHKニュース6

***6月***

6月27日から7月2日まで ロンドン訪問

日本と英国間の関係促進と相互理解を目的として1891年に発足されたジャパンソサエティ(日本協会)。ハブリチームは、当協会の年次夕食会と協会会長表敬訪問、そして2005年に出版した自伝の再出版についての話し合いを行うためロンドンに出かけた。

夕食会

約120人が集まった6月28日の夕食会は、ロンドン郊外にあるトゥイッケナム・ラグビー・スタジアム内の「スピリット・オブ・ラグビー・スイート」ルームで開かれた。今秋、ラグビーワールドカップが日本で開催されるためだ。夕食会の特別ゲストは前日本代表ヘッドコーチで現在イングランド代表ヘッドコーチを務めるエディー・ジョーンズ氏。時折冗談を交えながら、ラグビーというスポーツについて、コーチという職業について語った。

ジャパンソサエティのポター会長を表敬訪問した時に、来年の適当な時期にレクチャーを行わないかと誘われた。まだ未定であるが、もし実現すれば、2005年に行った「渋みからスーパーブランドへ 〜 失われた昭和の価値観」に次ぐものとなる。

出版社とは、2020年春の再出版を目指すことで同意した。

ケントテラス

ところで、ある晴れた日の午後、ロンドン北部にあるリージェンツパーク王立公園を散策ながら、1999年に所有していた家のことを思い出した。ほんのつかの間ではあったが、公園に隣接の、イギリス国王に帰属する「公の不動産」(The Crown Estateと呼ばれている)ケントテラスの物件で、不動産契約を交わし引越しの準備に取りかかっていたところ、不動産会社から電話がかかってきた。新たな買い手が相当の値段をオファーしている、というのも、建物と一緒についてくる女王主催のレージェンツパーク内の園遊会の招待状に興味があるからだ。妻も私も、園遊会などどうでもよかったので、すばやくこのオファーを受け入れた。正直なところ、5階建の手狭な物件に、私たちはあまり満足していなかったので、むしろ手放すことができ安堵したばかりではなく、利益まで得たのだった。

***5月***

5月1日 令和時代のはじまり

昨日の4月30日に御退位の儀式が宮中で行われた。そして今日、新天皇が御即位し、元号は令和となった。

両儀式は国内外で報じられた。いわゆる天皇の「生前退位」は1817年の光格天皇以来200年ぶりということに加え、一連の宮中儀式のおごそかさに関心が寄せられたわけだ。

Abdication ceremony last address
御退位の儀式の様子
Inauguration
御即位の儀式の様子
 
Inauguration of King Willem-Alexander of the Netherlands
オランダのウィレム・アレクサンダー新国王即位式に出席の皇太子ご夫妻(2013年4月30日)

5月21日 日本人の名前の語順を変えたい!

河野太郎外相は本日の記者会見で、日本人の名前をローマ字表記する際は、日本式に姓が先で名は後とするよう、外国報道機関に要請することを明らかにした。

明治政府のもと近代国家をめざした日本では、名前の表記も、西洋にならい、名が先で姓が後という順番を踏襲してきた。

だから、これは一大事だ。日本の首相Shinzo AbeをAbe Shinzoと表記せよということなのだ。中国の習近平国家主席や韓国の文在寅大統領と同じように、姓が先で名を後に表記せよということなのだ。

たかが名前ではあるが、正式に決まったら、コンピューターシステムをはじめ、あらゆる媒体でローマ字表記されている日本人の名前すべてを、ひっくり返さなくてはならないのだから、大変な作業になることは間違いない。

実は、2005年に出版された自伝The Magadama Doodleでは、日本人の名前をすべて「姓名」の順番で表記した。ところが、日本人の名前を私のように表記している英書など、一冊も見たことがなかったため、現在、再出版にともない、欧米式に戻そうと考えていたところ、今回の河野外相の「要請」が報じられた。

どうしようか。デジタル上なら、5Gで瞬時に入れ替えることも可能かもしれない。読者の好みで、どちらかを選び、ボタンをひと押しすれば完了だ。もちろん、冗談である。

困ったものだよ、Taro Kono、いや失礼、Kono Taro外相。

5月28日 世界が期待する日本の役割

民主主義に基づく戦後の国際秩序の崩壊を防ぐために、日本はなにかしらの貢献ができるのではないか。最近、日本のメディアで、そうした議論が交わされている。「最大の輸出相手国で巨大な隣国でもある中国と、日米安保条約のもと日本を守り重要な貿易(とりわけ自動車とハイテク製品)相手国でもあるアメリカの間で均衡を保っている日本の特異な立場に注目する」(読売新聞5月16日付)、「国際秩序を維持する力と、それを壊そうとする力の間に立って両者の橋渡し的役割を日本が担う必要性が、ますます高まってきた」(ジャパンタイムズ紙5月17日付)、「オーストラリアの主要な某シンクタンクが最近発表した地域ごとの最新のパワー指標によれば、日本は典型的なスマートパワー国であり、アジアにおける新たなリベラル的指導者」(ジャパンタイムズ紙5月28日付)。

確かに、近年の国際社会で起きている変化は、重大でゆゆしきものといえよう。なんといっても、トランプ米政権が国際社会の秩序を揺るがしている。アメリカの、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱、気候変動対策の国際的枠組みであるパリ協定からの離脱、イラン核合意からの離脱、ユネスコ(国連教育科学文化機関)からの離脱、日本や英国の主導で交渉が始まった通常兵器の取引を規制する国連武器条約からの離脱。一方ヨーロッパは、英国のEU離脱、ナショナリズムの台頭、EU懐疑論などの問題を抱え、2大強国フランスとドイツの指導者たちの立場も弱りつつある。

習近平国家主席の推進する「一帯一路」経済圏構想や経済発展により、中国は世界における重要な国となることだろう。しかしロシア同様、中国は対米、対欧関係で問題を抱えている。世界の主要国の中で、日本は、必ずしも特異とはいわないが、非常に珍しい国であることは確かだ。

国内総生産(GDP)世界第3位の日本は、経済のみならず、整備されたインフラ、民主主義国家としての信頼性、国民皆保険制度、平和で安全な暮らし、そしてなにより、近隣諸国との友好関係を築き上げてきた実績などにおいて、重要な国といえる。日本に駐留する5万人ちかくの米兵に依存せず自衛隊を憲法9条に明記することを目指す安倍首相は、ナショナリストと呼ばれている。今のところ、平和憲法は支持されているが、世論とはいつでも変わる可能性がある。

資源の乏しい日本にとって、諸外国と友好関係を築くことは重要だ。外交や高付加価値のテクノロジーは日本の国益に欠かせない。島国日本は、これからも、いかなる状況にあっても、日本の領海をめぐり戦闘を交えるようなことは避けねばならない。

問題は、「いかにして」であろう。日本が、安倍首相が、いかにして期待に応えるのか。日本は、国連常任理事国ではない。確かに、1954年から始まった政府開発援助(ODA)や、日本の国連への持続的な関与や、1991年から9年間あまり国連難民高等弁務官として活躍した緒方貞子さんの貢献などは素晴らしい。

さらなる国際貢献が日本に期待されている。2019年6月、日本で初めてのG20サミットが大阪で開催される。ハブリチームの住む福岡ではG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開かれる。

日伊蘭会談
ニューヨークでイランのロウハニ大統領と
会談する安倍首相(2018年9月)

アメリカが離脱した後、安倍首相はTPP新協定(CPTPPもしくは加盟11カ国にちなみTPP11)を推進し、その結果、コロンビアやインドネシアや英国などが参加の意向を示している。

また、アメリカとの軍事的緊張緩和を促すために、安倍首相は6月にイランを訪問する予定だ。昨年9月のニューヨークでの会談では、アメリカが離脱した核合意について「イランが合意の履行を継続していることを歓迎する」と述べ、合意を引き続き支持する意向をしめした。

ジャパンタイムズ紙の記事の結びの言葉は、「グローバルに活躍する日本の出番だ!」

***4月***

4月1日 新元号発表

新元号

日本政府が新元号は「令和」と発表した。4月31日に今上天皇が退位し、5月1日に皇太子が徳仁天皇として即位することで、日本の新しい時代がはじまる。「法令」「命令」「長官」「立派な」、あるいは、「他人の家族につける敬称」を意味する「令」と、「平和」「調和」の「和」から成る「令和」は、日本最古の歌集『万葉集』に由来するそうだ。平成をふくむ247の元号の中で、日本の古典からの引用は初めてとなる。安倍首相と閣僚たちが、ライバルの中国を意識し、今回は漢籍古典ではなく、純粋な国書を典拠にしたというのだが、皮肉にも、「令和」の出典とされる「梅花の宴」の場面は漢文で書かれているということだ。

新元号を喜ぶ一方で、西暦と併用するため、情報システムを含む、ありとあらゆる場面で膨大な変更準備が必要となってくる。元号表記を廃止して西暦に統一、元号はシンボルにとどめようとする意見もあるが、結論は、まだ何年も(何代も)先の天皇の時代まで待たねばならないだろう。

超巨大バーガー

新元号のお祝いも、いろいろあるようで、例えば、東京六本木のグランドハイアット東京の「ゴールデンジャイアントバーガー」などはいかがだろうか。金粉入りバンズに、黒毛和牛やフォアグラやトリュフのスライスをはさんだ直径25センチ、高さ15センチ、重さ3キロの超巨大バーガーはワイン1本付きで10万円。6〜8人で分け合うことができるそうだ。
まあ、小生は令和寿司で祝おう。

4月8日 短編小説「京都のバス停」の掲載決定!

2月3日のハブリ日記で、ライターズ・イン・京都のメンバーに招かれ「1950年代の京都」と題する講演を行い、大盛況だったことを報告した。その時、短編小説集The Tomb in the Kyoto Hills and other storiesを販売したところ、まさに飛ぶように売れた。

ライターズ・イン・京都とのご縁は、ここまでと思いきや、このたび雑誌『京都ジャーナル』に、私の短編小説Kyoto Bus Stopが掲載されることになった。フィクションではあるが、作者と若いフランス人女性との不思議な出会いと、彼女と日本人男性とのあやしい関係などなど、これ以上は言えないが、とにかく京都で実際に起きた出来事をもとに書かれたこの短編にご興味のある方は、こちらからご注文ください。

1月22日のハブリ日記でも宣伝しましたが、現在、タトル出版ではShowa Japanをプロモーション中です。アマゾンからのご注文はこちらからどうぞ。

***3月***

3月1日 危険な歩道

その通り!日本の都市部の歩道は、歩行者にとって、危険きわまりない。その理由は、自転車が歩道を利用し、しばしば歩行者に配慮せず、乱暴な運転をするからだ。

例外を除き、自転車は軽車両なので、道路交通法に従わなくてはならない。車道では左側を通行すること。危険な運転や信号無視などの違反行為に対しては、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられる。なによりも、自転車は歩道を走ることが禁じられているのだ!

歩道を右に左に走る自転車

ところが、自転車は歩道を右に左に走り、時には猛スピードを出し、そのため、歩行者は、ふと目にしたショーウィンドウの品物を見ようと立ち止まろうものなら、自転車とぶつかりかねない。

最近の新聞記事では、自転車と歩行者の事故は年間約2,500件で、未成年の、スマホを操作しながらの片手運転や、安全不確認の無謀な走行による事故が多いということだ。2017年の死亡または重傷事故の第一当事者は299人、その半数が24歳以下の若年者だった。

自転車利用者の6割が保険に加入している現在、自転車保険の加入を義務化する自治体が増えてきている。ただし、保険の不加入に対する罰則はない。

自転車が歩道を走行することを禁ずる法を定める動きはないようだ。たぶん、車道を走るのは、あまりにも危険すぎるし、もっと悲惨な事故が起こりかねないからだろう。

ドイツでは、自転車利用者の安全性を確保するための良案を考え出した。自転車専用道路があるので、歩行者は日本と異なり身の危険を感じることはない。だが、自転車利用者は、専用道路のない箇所では、歩道ではなく自動車道路を走行しなければならない。2018年には445人の自転車利用者が事故死、2017年に比べ15パーセント増の数となる。ドイツ政府はヘルメット着用を呼びかけるキャンペーンをはじめた。キャンペーンポスターには、下着姿の女性と胸をはだけた男性がヘルメットをかぶってポーズをとっている。ヘルメット着用は「セクシーではない」という認識をくつがえそうという目論見だったのだろうが、それに対し「下品」「性差別主義者」といった非難が沸き起こっている。人々の関心度が集まっているから、政府キャンペーンは功を成したわけだ。

命を守る ヘルメット
ヘルメット着用キャンペーンの標語は“クソみたいだが、命を守ってくれるヘルメット”

いずれにせよ、自転車は危険な乗り物、小生はバスに乗るとしよう。

***2月***

2月3日 1950年代の京都、そして、今

龍谷大学で講演

東京から戻って数日後、今度は京都へ向かった。ライターズ・イン・京都から招かれ、「1950年代の京都」という題名の講演を、龍谷大学で行うためだった。1950年代と言えば、昭和25年から35年。当時、神戸と大阪にあったオランダのナショナルハンデルス銀行に勤めていた私は、週末を京都で過ごしたものだった。当時の写真をパワーポイントで見せながら、その頃の京都の様子について語った。

結婚

京都の詩人島岡剣石氏を通じて、芸術家と知り合い、禅寺に出かけ、江戸時代から続く宿に泊まり、とうとう、昭和33年(1958年)10月に、名古屋出身の日本文学専攻の女子大学生吉田豊子と京都でお見合いをした。会った途端意気投合し、それから4ヶ月後に、神戸のオランダ領事館で結婚。48年間続いた私たちの結婚生活は、残念なことに、豊子の病死をもって、2007年に終わりを告げた。

聴衆は、私の京都の思い出話の中でも、特に、見合い話を気に入ったようだ。「京都さん」と題した自作の詩も朗読した。島岡氏によるこの詩の邦訳は、昭和33年に雑誌に掲載され、昭和45年には季刊誌『古都』の創刊号の巻頭を飾った。

京都さん 季刊誌『古都』

その夜、ホテルに戻ると、アメリカ人教授からメールが届いていた。「本日のお話に魅了されました。初めから終わりまで、実に見事に1950年代の京都の雰囲気が再現されており、堪能しました」なんとも嬉しい限りだ。私としては、京都を拠点とするライターたちからの様々な反応や質問を堪能した。

講演内容のレポートはこちらをご覧ください。

翌日から、今度は「今の京都」を楽しもうと、街へ繰り出したわけだが、2018年11月1日のハブリ日記で述べたように、京都はオーバーツーリズムつまり多すぎる観光客に、明らかに、悩まされていると感じた。特に、中国人旅行者が多く、どこへ出かけても、混雑しており、長い行列には、大声で声をかけ合っている団体が目立った。静謐なる古都は、いづこへ。

Reflections on a Life in Translation

幸い、同志社女子大学で行われたアメリカ人翻訳家のジュリエット・カーペンター教授の最終講義を聴講する機会に恵まれた。サイデンステッカーに師事し、安部公房、俵万智、司馬遼太郎、水村美苗などの作品の翻訳を手がけ、「日米友好基金文学翻訳賞」を2度受賞している彼女とは、小樽で開催されたジャパンライターズコンフェレンスで知り合い、彼女を通してライターズ・イン・京都を紹介された。多数の聴講者が集まった彼女の最終講義 'Reflections on a Life in Translation'と、その後のお茶会に参加し、名残惜しいひと時を過ごした。


京都の丸善

京都の丸善でも、タトル出版の倉上常務取締役と共に、Showa Japanのプロモーションを行った。


2月15日 食べ物を捨てない方法とは

売れ残った食品は、ゴミとして処分されるのが普通だ。たとえ、まだ食べられるにもかかわらず。

フードバンク福岡は、余剰生産、規格に合わない、季節商品の売れ残りといった様々な理由で捨てられるフルーツやパンやその他の食品と飲料水を受け取り、福岡県内の小中学校を含む80ヶ所もの施設に、無償で提供している。食べ物を捨てない生活を目指しましょう!

***1月***

1月22日 イノシシのように突き進む

クリスマスと新年をオランダで2週間過ごし、日本に戻った途端、東京へ向かった。まずは、学士会館で開催された日蘭協会の新年会。毎年恒例の楽しい集まりだったが、今回は食べ物が少なく、ワインも美味しいとは言えなかった。それでも、日蘭協会の仲間と交流できる絶好の機会であったことは確かだ。

翌日は、亡妻の豊子の遺言を果たすため、法政大学名誉教授の江橋先生にお会いした。妻の先祖が所有していた江戸時代の手書きの百人一首かるた一式を、江橋先生を通じて、大牟田市三池カルタ・歴史資料館へ寄贈することが妻の遺言だった。かるた研究者であり、また大牟田市の資料館にゆかりの深い江橋先生は、豊子のかるたを「極めて貴重で、史料価値が高い」と述べている。

法政大学名誉教授の江橋先生 手書きの百人一首かるた

夕方は、最近移転したばかりの日本外国特派員協会(FCCJ)で行われた、熊野古道を知るためのイベントに出かけた。平成16年(2004年)、世界遺産リストに登録された熊野古道の歴史は、平安時代から始まると言われている。古道の歩き方を聞き、土地の食べ物を味わい、熊野鬼城太鼓の演奏を楽しみながら、1958年に熊野をひとり旅した時のことを思い出した。この時の様子は、自伝『まがたま模様の落書き』に記してある。

倉上氏、ブリンクマン、箱山氏
左より、タトル出版の倉上氏、
ブリンクマン、丸善丸の内本店箱山氏

平成時代の終わりということで、戦後昭和から平成へかけての日本を論じたShowa Japanのプロモーション活動も行なった。タトル出版の倉上常務取締役と共に丸善丸の内本店へ出かけたところ、洋書担当の箱山氏が快く迎えてくれた。

上野の森美術館で開催中のフェルメール展には、思った通り、長蛇の列ができていた。フェルメールの作品9点に加え、彼と同時代の画家たちの作品が展示されているということで、混雑を予想し、インターネットで事前予約をして行ったのだが、やはり館内は押し合いへし合い状態だった。ちなみに、約4ヶ月間に及ぶ今回のフェルメール展の最終入場者数は、68万人だったそうだ。

上野の森美術館 フェルメール展


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