***10月***

10月15日 見つかった文豪たちの原稿と巨匠たちの絵画いろいろ

森鴎外
森鴎外
夏目漱石
夏目漱石

大掃除をしていたら鴎外や漱石の直筆原稿が見つかった!読売新聞によると、新潮社の創業者、佐藤義亮(1878〜1951年)が、個人的に所有していた明治・大正の文豪たちの原稿や手紙を冊子に貼って保存していたらしい。どれも貴重な研究資料となることは間違いない。

過去に紛失した絵画あるいは存在すら確認されていなかった作品が発見されることも多々あるようで、2013年から2017年の間に、「屋根裏」や「物置」から貴重な絵画が何枚も見つかった。持ち主はそうした絵画を贋作と思っていた、あるいは、誰の描いたものか知らなかったということだ。

レンブラントの『失神した人(嗅覚)』
レンブラントの『失神した人(嗅覚)』

18歳か19歳のレンブラントが描いたとされる小さな絵画『失神した人』は、1624年頃に、5感(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚)を表現する5作品を描いた時のひとつである嗅覚を表している。

額がヴィクトリア朝時代のもので、表面も剥離していたうえ、米国のニュージャージーの地下室で見つかったということで、当初は誰もこの絵画が本物のレンブラントとは思っていなかったようだ。500ドルから800ドルにも届かない値段でオークションに売り出されるところだったが、パリの美術商が本物のレンブラントであると鑑定すると、アメリカ人大富豪が個人のコレクションとして購入した。価格は300万から400万ドルと言われている。

モンマジュールの夕暮れ
ゴッホの『モンマジュールの夕暮れ』

長いこと贋作と信じられ、駐スウェーデン仏大使の屋根裏にしまいこまれていた絵画も、実はゴッホの作品だった。1888年の弟テオ宛ての手紙に、この絵のことが詳しく書かれていたので、ゴッホ研究家たちは、この絵が本物であると判断した。2013年よりアムステルダムのゴッホ美術館で公開されている。


ユディトとホロフェルネス
カラヴァッジョ『ユディトとホロフェルネス』

2014年にフランス・トゥールーズのオークショニアが見つけた「暗く、雑然とし、雨漏りのする屋根裏の壁に立てかけてあった」絵画が、実はカラヴァッジョの鬼気迫る『ホロフェルネスの首を斬るユディト』だった。まさに、歴史的発見だ。400年あまりを経て見つかったこの絵画の落札価格は122億から184億円と推定されていたが、これもまた、プライベート契約でアメリカ人大富豪が購入した。

この先も傑作が見つかるにちがいない。「過去」はまだ過ぎ去ってはいないのだ。

10月16日 水俣病は終わっていない

話は昭和37年にさかのぼる。当時、オランダのナショナル・ハンデルス銀行東京支店の支店長だった時に、チッソの化学工場から海に排出された水銀により汚染された魚介類を食べたことで神経がおかされる「水俣病」という公害病のことを初めて知った。

わたしのオフィスは東京駅の近くにあった「東京ビルヂング」の中にあり、シェル石油やチッソのオフィスも入っていた。チッソは頑なに、排出された水銀と「水俣病」との因果関係を否定していた。

水俣病患者とその家族たちは、チッソの本社が入っているビルの前で抗議のデモをはじめた。毎朝、わたしが出勤する時間には、プラカードを持った気の毒な人々が、きちんと一列に並んで道路に座り込んでいた。わたしの銀行の入り口はいつも開けてあり、邪魔にならないように気を遣っていた。自分たちの苦しみがチッソによってもたらされたことを認めさせ、健康を害し職を失いつらい生活を強いられている患者とその家族へ賠償金を支払うことを要求したのだが、チッソは己の非を認めなかった。

東京ビルヂングに入っている12ほどの会社のトップからなる「東星会」のメンバーたちも困惑し、わたしたちは年に2回ほど集まって芸者を交えての宴を催したものだが、誰もが「水俣病」の「み」の字も言わなかった。

それから何年も経って、患者と家族がチッソを被告として訴え、原告勝利の判決が下され、ようやくチッソは被害者へ賠償金を支払うことになった。2千人近くの人たちが亡くなり、何千人にも人々が四肢末端の感覚障がい、小脳性運動失調、両側性求心性視野狭窄、中枢性眼球運動障がい、中枢性聴力障がい、中枢性の平衡機能障がいなどに苦しんできた。重度の場合は麻痺や精神錯乱を起こして死に至るのだ。

本日の新聞に「水俣病は終わっていない」という記事が写真とともに掲載されている。まだ存命の被害者もいる。半世紀前にアメリカ人フォトジャーナリストのユージン・スミスと日本人写真家の石川武志は、水俣に暮らしながら被害者の姿を撮影した。

この秋、ジョニー・デップ製作・主演の映画『MINAMATA—ミナマター』が日本で公開され、また、『MINAMATAユージン・スミスへのオマージュ』と題された石川武志写真展も開催された。

11月5日から25日まで『フォト・ジャーナリスト W.ユージン・スミスの見たもの — 写真は真実を語る』が、フジフィルムスクエアで開催される。ここは2008年8月29日から9月30日までエイスブラント・ロッヘと私の写真展『あるオランダ人が見た昭和の日々』が開催された場所でもある。日本オランダ年2008—2009記念公式イベントとして富士フイルムが主催し、1ヶ月間で4万9千人が訪れた。

写真家石川武志
写真家石川武志
MINAMATA—ミナマター
映画『MINAMATA—ミナマター』
ユージン・スミス
石川武志が撮影したユージン・スミス
水俣病に関する書籍
水俣病に関する書籍

10月21日 名指揮者ベルナルト・ハイティンクが逝く

アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者で世界的にも有名な指揮者ベルナルト・ハイティンクが92歳の生涯を閉じた。1954年より2019年に引退するまで指揮者として65年間も活躍した。主にコンセルトヘボウであったが、世界的に著名なオーケストラに招かれることもしばしばあった。

彼は1962年(昭和37年)にコンセルトヘボウと初めて日本へ来てから、何度も来日した。特に1974年5月の演奏会は忘れられない。世界野生生物基金のために開催された慈善コンサートで、私も実行委員の一人として関わったからだった。上野の東京文化会館で、演奏会がはじまる前、委員会のメンバーは皇太子殿下夫妻に謁見し、妻とわたしが皇太子ご夫妻と握手している瞬間の写真は、数日後、ある週刊誌に大きく掲載された。

美智子妃殿下 明仁皇太子
明仁皇太子美智子妃殿下に挨拶をするブリンクマン夫妻
アムステルダム・コンセルト

世界野生生物基金を同じく支援したアムステルダム・ロッテルダム銀行が、その時に配布したのが、フィリップス社のLPレコードで、タイトルは『アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団ベルナルト・ハイティンク』。

このレコードを聴きながら彼の音楽を堪能した。


***7月***

7月1日 レジー・ライフ監督からインタビューを受けて

2018年のことだった。アメリカ人のレジー・ライフ監督が、福岡に住む私にインタビューを行い、その様子をカメラに収録した。話題は1964年東京オリンピック大会を含めた戦後の日本について。彼はドキュメンタリーを製作すると話していたが、どのような作品になるのかは明らかではなかった。

2018 インタビュー レジー・ライフ監督レジー・ライフ監督

無事インタビューを終えた監督から「仕上がったら連絡する」と言われたが、それがいつ頃になるのかはわからなかった。

本日、思いがけず、監督より、完成したドキュメンタリーフィルムがYouTubeで公開されているという連絡を受け取った。12分間ほどの番組中、私の他にもう2人が紹介されており、それぞれが思い出を語っている。また、私と友人エイスブラント(マイケル)・ロッヘが撮影した1950年代から60年代の日本の様子を撮影した数々の写真も使用されている。
MEMORIES OF THE 1964 TOKYO OLYMPICS AND BEST WITHES FOR THE 2020 TOKYO OLYMPICS

7月14日 オランダ大使館で開かれた展示会

東京オリンピック2020の開催にともない、東京のオランダ大使館では前回の東京オリンピック1964を振り返る展示会を催した。開会式で入場するオランダ選手団を撮影した私の写真(パネル上段の写真)も、この展示会を盛り上げた。

入場するオランダ選手団 展示会

7月19日 不死の世界をめざす11歳の天才少年

Laurent Simonsローレント・シモンズ少年

英タイムズ紙で驚くようなニュースが報じられていた。ベルギー在住のローレント・シモンズ少年が、11歳で、アントワープ大学より量子物理学の学士号を取得したという。母親はオランダ人というこの少年は、たった18ヶ月で中等教育を修了し、9歳で大学に入学した。

この少年の研究目標は「不死」。自分のためではなく、人々のために「体の部位のできるだけ多くを機械部品に置き換えられるようにしたい。だいたいの道筋はすでに構想している」と彼は言う。シモンズ少年の両親はそうした息子についていけないようだが、研究者たちは彼の発想に強い関心を寄せている。

知能指数(IQ)145のこの少年はアインシュタインなどの天才と比べられているが、母親によると彼はそうした比較を好まない。彼は誰もがそうであるように、「自分は自分」と思っているからだ。

彼の両親は、幼少時の息子の精神の健全さを心配したという。同年代の子供と遊ばず、玩具にも興味をまったく示さなかった。2019年、9歳の時、オランダのアイントホーフェン工科大学を中退し、アントワープ大学に入学を果たした。

父親(38歳)は、新型コロナウイルスの規制が解除されたら息子を英国へ連れて行き、古典力学や量子物理学のさらなる研究を続けさせたいそうだ。シモンズ少年の両親が合流するまでの間、ロンドン在住の叔父が彼の面倒をみてくれる。「息子の大学の先生たちはイギリス人が多かったし、彼らの考え方を、息子は気に入った。ただ、まだ未成年なので、法的になにがどのように可能なのか調べなければならない」と、父親は付け加えた。

シモンズ少年の学位論文はLee-Huan-Yang効果をめぐるもののようだが、これ以上のコメントは控えよう。いささか理解不可能な子供がいることだけは確かだ。

***8月***

8月8日 東京オリンピック2020

7月23日(金)に開幕した東京五輪は、すべての競技を終了し、本日閉会式を迎えた

今回のオリンピックは成功だったのか、否かは、個々人によって意見が分かれるところだろう。

ただ、いくつかの点については明らかだ。高温多湿(連日気温30度以上、湿度は60パーセントから80パーセント)という厳しい環境。新型コロナウイルス感染爆発のため医療崩壊に近い状態(大会組織委員会は、オリンピック選手団が感染した場合の医療態勢を、万全に整えてはいたが)。そして、なによりも無観客だったオリンピック大会。

そういうわけで、開幕前からオリンピック反対運動がSNS上のものも含め広がっていたのは当然だろう。しかし新国立競技場の建設も含め本大会に費やした(2兆円とも4兆円ともいわれている)費用を考え、日本政府と国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は実施するとした。確かに、1万1千人以上のオリンピック選手と4千人のパラリンピック選手は1年間の延期という試練をこえて東京大会に臨んでいることも忘れてはなるまい。

まさに異例づくしではあったが、オリンピック大会そのものは、おおむね無事に終わったと言えるだろう。

大会期間中も緊急事態宣言が実施され、これは8月末まで継続する見込みだ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、不要不急の外出や移動の自粛により、観光業界の経済損失は2兆1900億円に及ぶと述べる。

それでも日本選手のメダルラッシュに沸く日本。この明るい話題のおかげで経済効果が期待できるかもしれないという意見もある。

国別メダルランキング
順位 国名 合計
1 米国 39 41 33 113
2 中国 38 32 18 88
3 日本 27 14 17 58
4 英国 22 21 22 65
5 ROC 20 28 23 71
6 豪州 17 7 22 46
7 オランダ 10 12 14 36
8 フランス 10 12 11 33
9 ドイツ 10 11 16 37
10 イタリア 10 10 20 40

オランダも健闘したといえよう。小国ながらフランス、ドイツ、イタリアよりわずかに良い結果を残した。

オランダ選手団の入場
オランダ選手団の入場
日本選手団の入場
日本選手団の入場
大阪なおみ オリンピック聖火台に火

オリンピック聖火台に火をともす大阪なおみ選手

閉会式
205の国と地域が参加した東京五輪の閉会式

8月9日 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典

東京オリンピック大会閉会翌日の今日は、長崎原爆の日。今年は76年目となる。

長崎原爆の日
長崎市の平和公園で開催された平和祈念式典

***6月***

6月3日 どうなるのだろう、東京2020オピンピック・パラリンピック

新型コロナウイルスの感染はまだ続く。複数の変異株も広がりはじめた。海外からの一般観客は受け入れないことになったオリンピックに対し、日本では「中止」を求める声が高まっている。すでにおよそ1万人の「大会ボランティア」が辞退し、多数の医師たちは開催に懐疑的だ。

国内でのワクチン接種は、2月17日から医療従事者の先行接種が、4月12日から高齢者の接種が始まり、2回のワクチン接種を終えた人はたったの3.6パーセント(接種後の死亡例190人)。6月からは、オリンピックに参加する選手や指導者などに対しての接種が始まった。だが、7月末までに高齢者3600万人に2回のワクチン接種を済ませるという楽観的目標を達成しても、すでにオリンピックは始まっているだろうし、その時点でもまだ7割の国民は2回の接種を済ませていない状態だ。

日本政府も国際オリンピック委員会(IOC)も東京五輪は絶対に開催すると決めている。中止にした場合の損失は大きく、面子も潰したくないからだ。2019年12月にオープンした新国立競技場の建設費用はおよそ1570億円。政府も日本オリンピック委員会(JOC)も五輪イベントに対する投資を無駄にはしたくない。

バッハ国際オリンピック委員会会長は、選手村に入る75パーセントの人が大会前までにワクチンを接種または確保していると述べている。東京大会を目標にトレーニングしてきた選手たちも中止にならないことを望んでいるようだ。しかし、医療従事者もふくめた少なくとも半分の日本人は、東京五輪・パラリンピックを中止にしてほしいようだ。非常に悩ましい事態ではあるが、おそらく、開催されるだろう。

***5月***

5月17日 「EU離脱後のイギリスに必要なのは日本」

The CPTPP and its countries

こう述べるのは、タイムズ紙のイアン・マーティン記者。イギリスが、2月1日、環太平洋経済連携協定(TPP)に加入の申請を行ったことに対するコメントだ。

「正式加盟が実現すれば、イギリスはひとつの交渉で11カ国との貿易を実現させることができるから、賢明な決断だった。」と評価するのは王立国際問題研究所。
もちろん、から初の加盟国となるだろう。

マーティン記者いわく「日本は環太平洋圏における先頭(フロントライン)的存在。中国に隣接する日本は、オーストラリア、米国、イギリスと協力しながら海域を守り、中国の不穏な動きを監視する。」

CPTPP参加11カ国(日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ヴェトナム、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、メキシコ、チリ、ペルー)を合わせた経済は、経済成長著しいアジア太平洋地域に住む人々も含め約5億人の人口と、世界の国内総生産の13パーセントと、世界経済のおよそ15パーセントを包含している(2018年12月30日調印時点)。

自由民主主義国日本は環太平洋地域においてイギリスと協力しあうにちがいないとマーティン記者は期待する。昨年はイギリスと新しい通商協定を結び、今年はCPTPP委員会の議長国として、日本はイギリスの加盟を歓迎し、協力体制を構築することに意欲的だ。

5月20日 木を電池にするという画期的なプロジェクト

2015年6月、木材パルプから軟質で蓄電容量の大きいバッテリーを作る技術をスウェーデンと米国の研究者が発表した。スウェーデン王立工科大学とカリフォルニアのスタンフォード大学の研究チームは、木材パルプ由来のナノセルロースを使用して、耐衝撃性と耐ストレス性に優れた柔軟性のある泡のような電池の製造に成功した。

そして今度は日本製紙グループと東北大学が、電気自動車に使用されるリチウムイオン電池に替わる木材繊維の蓄電池を開発することを発表。「短時間に充電可能、急速の充放電ができ、従来の電池にくらべ廃棄処理も環境に負荷をかけない」電池をめざしている。この超ハイテク電池の詳しい仕組みはわからないが、地球温暖化が進む時代に、二酸化炭素排出量を減少させてくれる立役者となりそうだ。

5月31日 高輪築堤の現地全面保存を求める

日本初の鉄道が新橋—横浜間(24キロ)に開業したのは明治5年(1872)のことだった。現在のJR田町駅付近から品川駅付近の約2.7キロにわたり、鉄道は東京湾上に造られた堤の上を走っていた。その様子は多くの錦絵や浮世絵にも描かれた。

高縄鉄道之絵
「高縄鉄道之絵」月岡芳年画(1871年/明治4年)

その後、明治末期から昭和初期にかけ土地が必要だったため一帯は埋め立てられ、築堤は撤去されたと考えられていた。

出土

このたび、高輪周辺の再開発事業を手がけるJR東日本が、高さ170メートル前後の超高層ビル4棟を建設するため用地調査を行っていたところ、長さ1.3キロにわたる築堤が出土(写真)。産業遺産学会、考古学者、建築家、鉄道マニアらは高輪築堤の歴史的価値を重視する。

さっそく現地全面保存の動きが始まった。高輪築堤は、世界に誇る日本の鉄道文化のまさに出発点であり、鉄道は文明開化の象徴でもあった。植民地鉄道とは違い、国家の一大事業として建設された、東アジアにおける初めての鉄道ということで、世界遺産級の価値があるとメディアでは報じられている。

再開発計画をあきらめたくないのがJR東日本で、遺構のほんのわずかの部分なら保存もしくは移築をすると述べているが、これに対し日本考古学協会はJR東日本をはじめ国土交通省、文部科学省、文化庁や都知事らに「現地全面保存」を求める声明文を送付。一部保存や移築では歴史的価値や重要性が損なわれてしまうからだ。今もってJR東日本は再開発計画を見直す様子はない。

最近は、海外からも現地全面保存を求める動きが始まった。ユネスコと密接な関係を保つ日本イコモス国内委員は、今回出土された1.3キロの遺構を世界文化遺産として保存したいと述べている。「将来に伝えるべき、かけがえのない歴史的遺産」高輪築堤の現地全面保存を訴える日本考古学協会や日本イコモスに対し、JR東日本は果たしてどのような結論を下すのか。

***4月***

4月4日 入国制限が続く現状

新型コロナウイルス変種株感染拡大に伴い、日本政府は当分の間上陸拒否対象国・地域からの渡航者入国を停止している。日本人も含め全ての入国者・再入国者・帰国者に対し、出国前72時間以内に実施したCOVID-19に関する検査による「陰性」であることの検査証明の提出および、入国時の検査実施を求める。その上で、検疫所長の指定する場所(自宅等)で14日間待機し、国内において公共交通機関を使用しないことが要請されている。

日本からオランダを含む欧州連合(EU)への渡航は今もって原則禁止されている。日本で変種株感染者が増えていることが理由だ。

日本国内におけるコロナワクチン接種は非常に遅れをとっている。4月3日時点で少なくとも1回は接種を受けている人口あたりのワクチン接種率は1パーセント未満。アメリカ合衆国は48.35パーセント、オランダは13.88パーセント。日本では65歳以上の高齢者はまだ接種を受けていない。予定では4月中旬から開始、3ヶ月ほどかかる予定だ。

4月5日 聖火リレー始まる

聖火リレーのルート

3月25日、オリンピック聖火リレーが福島県から始まった。

121日間かけて47都道府県を巡った後、7月23日の開会式で聖火台へ点火される。

新型コロナウイルスの感染が深刻な状況になっている大阪府では公道でのリレーをすべて中止し、そのかわり万博記念公園内で一般観客を入れずに実施することに決めた。

パンデミックが世界各地で猛威を振るっている状況が続いているので、1年延期した東京五輪を中止にした方が良いという声が日本国内であがっている。すでに大会組織委員会は海外からの観客を受け入れない方針を固め、購入済みチケットは払い戻す意向だ。

前回の東京オリンピック(1964年)とは全く比べ物にならない。日本で初めて開催されたオリンピック競技大会は問題も障害もなく、大成功だった。お祭りムードの開会式を国立競技場で実際に見た私はこう感じたことを覚えている。「これは戦後復興の終わりを告げる象徴的な出来事なのだ。これからは日本も一人前の立派な国として世界の先頭を行くのだ。」(The Call of Japanより引用)

***3月***

3月21日 沖縄付近で頻発する中国の挑発行為

沖縄県石垣市尖閣諸島

尖閣諸島周辺海域における中国公船の領域侵入が頻発している。中国と台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているが、行政区域上は沖縄県に属している。中国外務省のウェブサイトによると、中国は15世紀初めから尖閣諸島をコントロールしてきたと述べている。一方、日本は1895年より領有権を有してきた。

3カ国のみならず、さまざまな国の交易船も行き交う非常に重要な水域なので、尖閣諸島が中国のものになれば実質的に交易ルートは中国の手中に握られるだろう。

そこで、尖閣諸島防衛を想定し日米が共同軍事訓練を実施することを表明。すでに悪化気味の米中関係のみならず日中関係にとっても対立を激化させることは間違いないだろう。さっそく中国は日本をアメリカの「従属国」と非難した。日本はこの発言を受け入れられないとして、外交ルートを通じて反論した。

香港の民主主義を弾圧し、台湾を「歴史的」に中国の領土の一部だと主張する中国に対しても、日米共に反対の姿勢を表している。

尖閣をめぐる緊張関係が紛争に発展せず、事態が穏便に収まることを願うばかりである。

3月31日アメリカで広がるアジア系アメリカ人に対する差別や暴力行為

ここ1年の間にアジア系アメリカ人を標的にしたヘイトクライムが全米各地で起きている。特にアジア系女性を狙っている。3月16日にはジョージア州アトランタの3店舗のマッサージ店で白人男性が8人を銃殺し、そのうちの6人はアジア系女性だった。

Stop AAPI(Asian American Pacific Islander) Hateと呼ばれるアジア系アメリカ人やアジア太平洋諸島系アメリカ人へのヘイトに反対する非営利団体によると、アジア系住民に対する差別や暴力行為は毎年多数発生しており珍しくないのであるが、コロナ禍により彼らに対するヘイトクライムは急増しているという。トランプ前大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「カンフルー(カンフーとインフルエンザを組み合わせた造語)」と公言していたことで、アジア系への憎悪が高まった。平均的なアメリカ人には中国人も日本人も韓国人もベトナム人もフィリピン人も区別がつかないため、ほとんどのアジア系アメリカ人が全く不当な非難を受けている。

中国系アメリカ人ほどではないが、日系アメリカ人も同様の人種差別に苦しめられている。3月28日付NHKワールドのウェブサイトでは暴力や嫌がらせなどの被害に遭った人は中国系が最も多く40パーセント、日系あるいはアメリカ在住日本人では6パーセントとなっている。おそらく中国系アメリカ人の人口が日系アメリカ人の3倍以上だから、被害数も多いのだろうか。

人種差別問題は多くの国に存在する。日本でもひと昔前に比べれば少なくなってはいるが、白人欧米人以上に、在日韓国人や中国人や黒人に対する差別や偏見はいまだに根強いといえよう。

日本で40年以上暮らしてきた私自身は、めったに差別されたことはなく、あったとしてもほんのわずかなもので、むしろいつでもどこでも好意的に扱われてきたと感じている。

***2月***

2月6日 猛威を振るう新型コロナウイルス

日本政府は、1月8日に首都圏の1都3県、13日に7府県への緊急事態宣言を出した。つまり、飲食店の営業は午後8時まで、酒類提供は午後7時まで。テレワークによる出勤7割削減。午後8時以降の外出自粛。ただし、これらはあくまでも要請であって、罰則を伴う外出禁止命令ではない。例えばオランダ政府は全国的な夜間外出禁止令を発動。これに対し、自由を奪われたと怒れる若者たちが大規模な破壊的抗議デモを行った。

世界的に見れば、日本のコロナ感染者数と死亡者数は非常に少ないのだが、年明け後、死亡者の数が増加傾向を見せている。こうした感染拡大を受け、欧州連合(EU)は日本からの渡航を原則禁止としている。

それでもは、他国に比べると日本は僅かといえよう。

アメリカ合衆国 0.001395
イギリス 0.000871
オランダ 0.000837
日本 0.000025
死亡者 5月30日から2月5日
までの増加率
5月30日 10月30日 2月5日
アメリカ合衆国 104,128 228,701 461,765 4.43倍
イギリス 38,161 45,955 112,092 2.93倍
オランダ 5,931 7,258 14,355 2.42倍
日本 882 1,748 6,373 7.22倍
感染者数
5月30日 10月30日 2月5日
アメリカ合衆国 1,781,644 9,023,894 26,949,087
イギリス 271,222 965,340 3,929,835
オランダ 46,126 330,255 1,001,826
日本 16,759 99,674 404,128
100万人当たりの感染者数
5月30日 10月30日 2月5日
アメリカ合衆国 5,406 27,382 81,774
イギリス 4,082 14,530 59,153
オランダ 2,643 18,995 57,408
日本 133 791 3,209

グーグルニュースサイトでは毎日データを更新している。

憂慮すべき数値は、厚生労働省が警視庁の統計に基づいて発表したものだ。2020年、コロナで亡くなった3,460人の6倍にあたる2万919人が自らの命を絶った。この数字は前年比3.7パーセント増で、これまで10年連続で減少していた自殺者数が、11年ぶりに増加に転じた。女性と子供の増加率が顕著で、コロナ禍によるストレス、生活困窮、孤立感が要因ではないかと専門家は分析する。

***1月***

1月2日 118歳の誕生日イン福岡!

田中カ子さんの118歳の誕生日
118歳の田中カ子(かね)さん

この日は世界最高齢の田中カ子(かね)さんの118歳の誕生日。ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功した1903年に生まれた田中さんは、2019年3月、116歳の時点で、ギネスワールドレコーズ社より「存命中の世界最高齢」に認定された。ちなみに、かねさんと同じ年に生まれた人は、作家ジョージ・オーウェルや小津安二郎監督や歌手兼俳優のビング・クロスビーなど。


1月14日 追悼 作家半藤一利氏

本日の英字新聞ジャパン・ニューズは、1月12日に亡くなった作家半藤一利氏の功績を報じた。殊に昭和史の研究家として有名なノンフィクション作家で、2006年に毎日出版文化賞特別賞を受賞した『昭和史』はベストセラーとなった。2015年には「常に『戦争の真実』を追求、数々の優れた歴史ノンフィクションによって読者を啓蒙してきた」として、菊池寛賞を受賞。

あるオランダ人の「昭和ジャパン」論

私は個人的に会ったことはなかったが、90歳で亡くなった半藤氏を追悼したい理由がある。2009年、拙著Showa Japan - The Post-War Golden Age and its Troubled Legacyが『あるオランダ人の「昭和ジャパン」論』(溝口広美訳)としてランダムハウス講談社より出版された時、帯の推薦文を書いてくださったのが半藤氏だったからだ。

「日本人には気づかないユニークな昭和論!戦後体験を共有しつつヨーロッパ人の目を通し郷愁的にのみ昭和を回顧することに警鐘を鳴らす」という半藤氏の文章を読み返しながら、改めて、彼に感謝の意を表したい。


1月21日 デジタル化社会到来 ― 不安で不便な世の中だ

デジタル教科書

デジタル教科書

「義務教育課程でのデジタル教科書の普及率を2025年度末までに100パーセントにするため、日本政府がデジタル教科書の利用制限撤廃する方針を固め、2021年4月から適用」というニュースが日本経済新聞などで報じられたのが昨年12月21日のことだった。長時間スクリーンを見ることで視力や身体の発達に悪影響があるかもしれないことを考慮し、現在、日本の小中学校ではデジタル教科書の使用は、各教科の授業時間数の2分の1未満と定められている。読売新聞が活字文化の日に寄せた社説(2020年10月27日)では、「デジタル端末は、熟読し、深く考えるのには不向きだ、とする研究結果もある」とし、紙の本に親しむ意義の再認識を論じている。

スマホ運転

スマホ依存症は大人だけではなく子供にまで蔓延している。車を運転しながら、自転車をこぎながら、スマートフォンを見ている人までいるではないか。

今回のデジタル教科書利用制限撤廃の背景には菅内閣の掲げる「デジタル化」推進がある。

デジタル教科書に対する抵抗は強い。そもそも何故、教科書をデジタル化しなければならないのか。本を読み、文章を書き、思考力を養うという教育の基本がおろそかになることを懸念する声もある。デジタル教科書を使用する目的については、明らかではない。

国際スピード郵便(EMS)

オランダへ小包を出しに近所の郵便局へ出かけた。すでに自宅でEMS(国際スピード郵便)ラベルに受取人と差出人その他の項目をすべて記入していたので、即座に扱ってもらえると思いきや、1時間近くかかってしまった。欧米のセキュリティー向上のために国際郵便物を送る場合は通関電子データの送信が義務化され、2021年1月1日から手書きラベルの扱いは引き受けなくなったからだ。郵便局員より、スマートフォンから国際郵便マイページサービスにアクセスし、住所や氏名や品物名を打ち込み、それを郵便局内にある機械に読み取らせる方法を教わり、ようやくラベルを印刷できた。局員もこのシステムに不慣れなようで、親身になって手伝ってはくれたが、時間がかかった。

総務省の試算ではデジタル化による支援を必要とする高齢者は約1000万人に及ぶとされ、「情報格差(デジタル・ディバイド)」解消のため、今春から政府がセミナーなどを催していくという。

私としては、デジタル化以前の、人間同士によるやりとりに戻りたいと思うわけだ。


© 2021 ハンス・ブリンクマン/溝口広美